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0−157などによる食中毒…下痢止めを飲み続けることは危ない

苦しくても…下痢止めを自己判断で服用し続けるのは危険なケースも

 「О−157」などによる痛ましい悲劇が度々起こっています。兵庫県伊丹市の「たにみつ内科」で地域のホームドクターとして奮闘している谷光利昭院長は、食中毒の症状が見られた場合、下痢止めを服用し続けることの危険について注意を促しました。
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 最近、O−157(腸管出血性大腸菌)による食中毒の事件が、マスコミを通じて取り上げられていますね。最近も40代の男性がO−157によって亡くなられたとの報道を見ました。
 食中毒の原因の多くは、カンピロバクター、サルモネラなどの細菌やノロなどのウィルスにより引き起こされますが、事前に加熱処理を加えることにより、無毒化することができます。
 ただ、例外もあります。ブドウ球菌などから排出されるエンテロトキシンと言われる外毒素は熱に強く、100度の加熱をしても毒素の効力は失われません。加熱するとブドウ球菌は死滅しますが、外毒素だけが残存してしまうのです。他にも、セレウス菌やウェルッシュ菌など、加熱しても死滅しない特殊な菌は存在します。
 ただ“救い”は、これらの菌や毒素によって食中毒を起こしたとしても、多くの人は問題なく回復して、比較的短期間で元気になることが多いんです。O−157も加熱による殺菌が可能なので、食べ物を加熱処理すれば感染のリスクがかなり少なくなります。75度の高温、1分間で菌が死滅します。ただし、加熱処理ができない生野菜や冷菜、御惣菜などに付着した場合、話は違ってきます。
 潜伏期は3〜5日間で5歳以下の子供さんに多く発症します。O−157が、体内に入ったからと言って必ず発症するわけではなく、大人などで免疫能力が強い場合には、無症状のことも多々あるんです。外国などで現地の人が平気でも、日本人が同じものを食べたら、お腹を壊すようなものです。要は、個人の免疫能力(細菌等に抵抗する力)にかかってくるのです。
 O−157が更に厄介なのは、体内で毒素を出すことです。この毒素が腎臓に悪さをして、おしっこが出なくなったり、血尿を出したり、腎不全から死に至らしめるケースがあるのです。そこで重要なことがあります。以前にも書いたことがありますが、下痢止めを飲まないので欲しいのです。
 死に至った患者さんのケースで、下痢止めを服用していたという話は少なくないのです。O−157のように体内に入ってから別の毒素を出す細菌は特に要注意です。下痢として体外に排出されずに、O−157が長期間にわたって残存するために、細菌から毒素が排出され続けます。そのことにより、腎臓が痛めつけられて、死に至ってしまった可能性も否定できません。
 下痢、嘔吐(おうと)は苦しいのですが、それには意味があります。症状を抑える薬だけを飲むことは、場合によって、とても危険です。非常事態の場合に、一度くらいの内服であれば大きな問題は起きないかも知れませんが、自分の判断で下痢止めを飲み続けることは、危険な行動であることを分かって頂きたいのです。
 もう食中毒による痛ましい死亡記事は見たくはありません。さまざまな原因はあるとは思いますが、くれぐれも“自己判断”で服用を続けることはお控えください。
 ◆筆者プロフィール 谷光利昭(たにみつ・としあき)たにみつ内科院長。93年大阪医科大卒、外科医として三井記念病院、栃木県立がんセンターなどで勤務。06年に兵庫県伊丹市で「たにみつ内科」を開院。地域のホームドクターとして奮闘中。