原田マハ小説にも! 「松方コレクションを守った男」とは?

さまざまな趣味と娯楽の奥深い世界をご紹介するTOKYO FMの番組「ピートのふしぎなガレージ」。5月11日(土)放送のテーマは「松方コレクション」。みなさんは「松方幸次郎」をご存じですか? 彼は、明治の終わり頃から戦前まで、実業家や政治家として活躍し、川崎財閥(現在の川崎重工や川崎製鉄)を育てた人物です。そして、美術品の収集家としても知られ、彼の集めた作品は「松方コレクション」と呼ばれています。今回は松方コレクションについて、TOKYO FMの番組の中で詳しい方に教えていただきました。

※写真はイメージです。



◆文藝春秋 八馬祉子さん
「松方コレクションを守った男とは」


── 日置釭三郎とはどんな人物ですか?

日置釭三郎は、松方幸次郎の会社で航空技師として働いていた人です。彼は、フランス人と結婚して田舎に家を買い、そこで松方コレクションの一部を保管していました。原田マハさんの小説で、“その家を買うためのお金を奥さんの実家に出してもらう”というくだりは創作ですが、それ以外は忠実です。

私は、原田さんと一緒にパリ近郊のアボンダンという町まで取材に行ったのですが、公証役場に記録が残っていました。1931年に日置釭三郎が家を買い、ジェルメンヌ・ブルドンという女性と結婚し、そして奥さんが戦争中になくなっていることは文書で確認できています。その事実をもとに、原田さんが物語として綴ったのが「美しき愚かものたちのタブロー」という作品です。

── なぜ日置釭三郎は自宅で松方コレクションを預かることに?

1931年といえば、松方幸次郎がすでに川崎造船所の社長を退いている年。実は、その前から日置に対する送金は途切れていました。それで日置はロダン美術館から「ウチで預かっているコレクションをどこか別の場所へ移すか、保管料を払ってくれ」という手紙を受け取っています。

そして日置は1938年に勃発する第二次世界大戦を見越して、コレクションを田舎に疎開させる決心をしました。そんな先見の明があったのは、日置が軍人であったことと無関係ではないでしょう。

── 戦後、破損していた美術品もあったそうですが

原田さんが仰っていたのは「戦争中に家を売るのは非常に難しいだろう」という推測です。実際、アボンダンにある日置の家を見に行ったら、いかにも寒そうな本当に小さな農家でした。昔ながらの農家の納屋のような造りで、高い天井の屋根裏に絵画を隠していたら、保管も難しかったはずなのに、よく守り抜いたと思います。

実は日置がアボンダンに疎開させたコレクション群がどうやってパリへ戻ったのか、それがなぜパリの国立近代美術館に保管されフランスが接収するに至ったのかは、今でもよく分かっていません。私たちがパリで取材した時も、複数の美術関係者が「これは高度な外交問題でもあるので研究が難しい」と仰っていました。特に日置が何をしたか、どういう人物だったかという資料はあまり残っていません。でも、だからこそ原田さんは想像の翼を広げて、小説として描きやすかったのではないでしょうか。



TOKYO FMの「ピートのふしぎなガレージ」は、《サーフィン》《俳句》《ラジコン》《釣り》《バーベキュー》などなど、さまざまな趣味と娯楽の奥深い世界をご紹介している番組。案内役は、街のはずれの洋館に住む宇宙人(!)の博士。彼のガレージをたまたま訪れた今どきの若者・シンイチと、その飼い猫のピートを時空を超える「便利カー」に乗せて、専門家による最新情報や、歴史に残るシーンを紹介します。

あなたの知的好奇心をくすぐる「ピートのふしぎなガレージ」。5月18日(土)放送のテーマは「梅」。お聴き逃しなく!



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<番組概要>
番組名:ピートのふしぎなガレージ
放送エリア:TOKYO FMをはじめとする、JFN全国37局ネット
放送日時:TOKYO FMは毎週土曜17:00~17:50(JFN各局の放送時間は番組Webサイトでご確認ください)
番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/garage


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