新型コロナ 最新の感染状況や対応は

設置されては撤去されるブランコの秘密

設置されては撤去されるブランコの秘密

めくるたび、どんどん怖くなる。
『一行怪談』で知られる吉田悠軌さんの書き下ろし怪談集『日めくり怪談』から選りすぐりのお話をご紹介します。
1日5分の恐怖体験をお楽しみください。

設置されては撤去されるブランコの秘密

 ブランコが何度も消えたり現れたりするなんて、聞いたことないですよね?
 でも僕の近所の公園では、そうなんです。
 あ、言い方が悪かったけど、ブランコが消えること自体は、別に怪現象じゃないですよ。
 子どもの安全のため、役場の公園管理課が撤去するからです。
 というのも、それがまたよく事故の起きるブランコだからでして。
 
 僕が小学生の時も、ブランコに乗っていた同級生が怪我をしました。
 いきなり地面に滑り落ちて、勢いのついたブランコが頭に激突したんです。
「誰かに下から足をひっぱられた」
 当時の彼は、そう主張していました。
 いや、そんなのありえないだろう。僕も幼いなりに、そう思いましたよ。地面から手でも伸びてきたってのか? ばかばかしい。
 ただ、それから少しして、他ならぬ僕が同じようにブランコから落ちてしまいました。
 いつも通り遊んでいたら、急に「ぎゅっ」と足首をつかまれた感触がして、そのまま、地べたまで引きずり下ろされたんです。もちろん周りには誰もいませんでした。
 
 同じような目にあう子どもたちは、昔からたいへん多かったそうです。
 さすがに危険だということで、僕が負傷した直後、ブランコは撤去されました。
 そして、これまた変な話ですが。
「これで何度目の撤去かわからないね」
 などと大人たちが呟いていたのも覚えています。そのブランコは撤去されても、しばらくしてまた同じ場所に設置される、というのを繰り返しているのです。
 なんでも町に一人、うるさいお婆さんがいて、ブランコを戻せとクレームを入れているそうです。お婆さんの家は地元の名家なので、役所も言うことを聞かざるを得ないのだとか。ここは田舎なので、そういうこともあるかもしれません。
 でも、お婆さんはなぜ、そんなにブランコにこだわるのでしょうか?
 

(イメージ画像/写真AC)

(イメージ画像/写真AC)

 僕は高校の自由研究で、地元の歴史を調べたことがありました。町の老人たちに戦時中の話を聞いて回るというものでしたが、そこで偶然、あの公園の由来を知ったのです。
 公園があった土地は、戦後まで手つかずの荒地でした。
 そこには一本だけニレの大木がはえていました。
「首吊りの木」と呼ばれていたそうです。
 名前の由来は、その木で首吊りをする人が多かったから。いわゆる自殺の名所というやつです。そんな木でしたから、怪談めいた噂も生まれました。
 
 ここで首を吊ったものは、成仏できず、ずっと木の下にとどまることになる。
 自由になるためには、誰か別の人が、また新しく首を吊らなくてはいけない。木の根元では、自殺者の霊が、身代わりになる人間を狙い続けている。
 だからニレの木のそばを通る人たち、そこで遊ぶ子どもたちは、不思議と首を吊りたくなってしまう。そして縄に首をかけたとたん、死者がその足をつかんで下からひっぱるのだ……。

「変に自殺が続いていたのを、そうやって無理やり理由づけしたんでしょうな」
 話をしてくれた老人は、そう笑っていました。
 また「本当かどうかは知らないけど……」と言いつつ、意外なことも教えてくれました。例のお婆さんの弟さんもまた、そこで自殺したのだそうです。
 もちろん、ただの昔話に過ぎないのでしょう。ただ、戦後に荒地が整備されて公園となり、ちょうど首吊りの木の場所にブランコが設置されたのは事実みたいです。

 もしかしたら、と僕は思いました。
 あの場所にはまだ、首吊りで死んだ、お婆さんの弟がいるのではないか?
 ブランコをこぐ様子は、首を吊った人間が空中で揺れているようでもあります。それを見たお婆さんの弟が、子どもたちの足をひっぱっているのではないでしょうか。
 
 結局、僕が大人になるまでに二度ほど、そのブランコは撤去と再設置を繰り返しました。
 とはいえここ数年は撤去されたままで、復活する様子もありません。お婆さんももう高齢ですから、影響力が落ちているのでしょう。ただ聞いたところによれば、
「ちょっと子どもが落ちるくらい、いいじゃないのよ!」
 お婆さんが役場でそう叫んでいたとも聞きました。まあ、それも定かではありませんが。

1日5分の恐怖体験、いかがでしたか?
『日めくり怪談』は毎日読んでもひと夏楽しめる、全62話を掲載。
詳細はこちらから。

7月の『日めくり怪談』特集一覧
7月2日 夜道を歩く女性の二人組が向かう先
7月4日 設置されては撤去されるブランコの秘密
7月6日 クラスメイトの机に置かれた手紙
7月9日 誰も来ないはずの男子トイレで目にしたもの
7月13日 息子に見えている母の顔
7月15日 内線電話から聞こえてくる声
7月19日 祖母に禁じられた遊び

ジャンルで探す