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「心にお水をあげている感覚に」川村エミコさんを救った茶道エッセイ

「心にお水をあげている感覚に」川村エミコさんを救った茶道エッセイ

「心にお水をあげている感覚に」川村エミコさんを救った茶道エッセイ

各界の読書家が「心が救われた本」を語る特集企画「しんどい時によみタイ  私を救った1冊」。

今回、愛読書を紹介してくれるのは、初のエッセイ集『わたしもかわいく生まれたかったな』が好評発売中の川村エミコさんです。
川村さんが「悩んだ時、立ち止まった時、心を溶かしてくれる」という1冊とは……。

(構成/よみタイ編集部)

まえがきで涙がボタボタと

私を救ってくれた一冊は森下典子さんのエッセイ『日日是好日にちにちこれこうじつ 「お茶」が教えてくれた15のしあわせ』です。樹木希林さんが出演されて映画化もされています。

初めて読んだ時、まえがきで涙がボタボタと溢れてきました。「長い目で、今を生きろ」と締め括られたそのまえがきは、ギュッと、何かの我慢でなのかなんなのか、動かなくなって固まっていた心の外側をペリペリと剥がしてくれて、心が溶けていきました。溶けて、目から涙が溢れてきました。

「その時、その時でいいんですよ。」「きっと気付いていくことがありますよ。」「慌てず慌てず、そのままでいいんですよ。ゆっくりじっくり行けばいいんですよ。」と言われている気持ちになりました。

森下典子『日日是好日 「お茶」が教えてくれた15のしあわせ』(新潮文庫)

森下典子『日日是好日 「お茶」が教えてくれた15のしあわせ』(新潮文庫)

森下さんがお茶を習い始めて学んだことが書かれているこのエッセイは、スッと身体に染み込んで来ます。食べ物で言ったら、添加物や合成着色料が一切合切入ってない感じです。オーガニックです。

その時のその風、空気、気持ちを淡々というよりトントンと言ったほうがニュアンスが近いのですが(森下さんのちょっとした明るさのようなものがトントンという音に合うのです)トントンとゆっくり綴られています。媚びてないです。決めつけず、ただただ書かれています。そこがとても好きです。

感じ方は自由ですからね、とも言われている気がします。行間に奥行きがあって、心にお水をあげている感覚になるのです。

そして、森下さんのお茶の先生のひと言ひと言は、心にとても響きます。

「頭で考えず手に聞くこと」「今、ここにいるということ」「無」の話、「聴雨」そして「日日是好日(毎日がよい日)」。

お茶を習ったこともないですし、お茶のことは何も分からないのですが、読了すると日々の生活がかけがえのないものになります。白黒の日常は白黒のままですし、セピア色の日常はセピア色のままで、彩りが出るわけではないのですが、白黒は白黒のまま、セピア色はセピア色のまま愛おしくなります。

現在悩んでいることや今までの後悔を、森下さんがお茶を通して気付いたことを綴った文章が、洗い流してくれます。

「あー私もこんな風に過ごしたい。」「季節を感じて過ごしたい。」と強く思います。

私がこの本を読んだ時は39歳でした。一人でもとても充実していましたが、周りは結婚して、もう高校生や大学生の子どもがいる同級生もいて、「さて、どうしたもんかなぁ。このまま一人なんだろうか。」と答えが出ないことを毎晩考えていました。

そんな時読んだ『日日是好日』には、自然に身を任せることや「一期一会」という考え方、今ある一日を大事に思うことや人生の季節について書かれていました。いつの間にか読書が自分と向き合う時間にもなっていて、そして辿り着きます。

目の前のことを全力でとにかくやる! やりきる!!
それに尽きます! とグッと心が決意で固まります。

悩んだ時、立ち止まった時、この本は私の心を溶かしてくれて、最後にはまた強い決意と共に固めてくれます。押し付けることなく、大事なことが詰まっています。森下さんの物事との距離感も好きです。

今を大事に生きよう! と思える

伊坂幸太郎『フィッシュストーリー』(新潮文庫)

伊坂幸太郎『フィッシュストーリー』(新潮文庫)

伊坂幸太郎さんの『フィッシュストーリー』も救ってくれた本の一冊です。

4つの中編集です。その中の表題にもなっている「フィッシュストーリー」。すごく好きです。イケてます! 未来は明るいんじゃないかなぁと思えます。何でもないと思っていることや何にもならないと思っていることがいつの日か誰かを救ったりするかもしれない、そんなお話です。

全ては繋がっています。これもまた、今を大事に生きよう! と思える一冊です。

川村エミコさん初のエッセイ集、好評発売中!

集英社 定価1320円

集英社 定価1320円

川村さん初のエッセイ集『わたしもかわいく生まれたかったな』には、これまでの恋愛遍歴を振り返った「恋愛迷子のあんな恋、こんな恋。」のほか、気になる男の子に「粘土」とあだ名を付けられたエピソード、結婚・出産を迫ってくる「どうするの?なんで?女」撃退法など、数々の傑作エピソードが収録されています。
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