なぜトヨタは販売店を統合? 人気ミニバン「アルファード/ヴェルファイア」も統一化される可能性も

トヨタは、全国的に「トヨタ店」「トヨペット店」「カローラ店」「ネッツ店」といった4つの販売ブランドを持っています。しかし、2019年4月から東京地区において1つに統合するのです。なぜ、このタイミングで1つになるのでしょうか。

自動車メーカーの販売網が変化する意図とは

 10年ほど前までは、国産自動車メーカーの多くはいくつかの販売ブランドを展開していました。それぞれの店舗では、同じメーカーであっても取扱車がことなっているという時期があったのです。

 しかし、現在ではほとんどの国産メーカー系販売チャネル(系統)は統合され、どの店舗でも同メーカーのクルマであれば購入ができます。

 そんななか、トヨタは依然と4チャネル体制を維持していましたが、2019年4月より東京地区に存在する4つの販売会社を統合するのです。なぜ、トヨタはこのタイミングで統合をするのでしょうか。

売れ筋ミニバンのアルファードとヴェルファイア

 トヨタの販売店は高級車と商用車を扱う「トヨタ店」、年配の人向けのセダンを中心としてきた「トヨペット店」、そして小さめの車両が中心の「カローラ店」、若者向けの車種を揃えた「ネッツ店」と4つの販売チャンネルを維持しています(プリウスなど一部車種は複数の販売店で併売)。

 しかし、トヨタの販売店も変わろうとしています。2018年11月、「未来のモビリティ社会に向け、日本の販売ネットワークを変革」というプランを公表しました。

 その大きなポイントが全販売店全車種併売化の実施で、2022年から2025年をめどに、原則的にどの販売店でもすべてのトヨタ車が買えるようにするといいます。その狙いはどこにあるのでしょうか。

 トヨタ以外の国産メーカーは、すでに販売店の統合をほぼ終えています。「ホンダカーズ」として統合されているホンダの販売店は「プリモ」「クリオ」「ベルノ」と3つに分かれていました。

 日産も、「日産店」「モーター店」「サニー店」「プリンス店」「チェリー店」と5つもの販売店チャネルを統合済み。マツダや三菱も同様の状況でしたが、現在ではすべての販売店でどのクルマも買える体制になっているのです。

 販売系列会社の統合について、トヨタ自動車広報部は次のように説明します。

「販売の体制を『チャンネル軸』から『地域軸』へと見直し、より地域に密着したディーラーとすることです。たとえばお客様の家の隣にトヨタの販売店があっても、今のチャンネル体制ではそこで希望する車種が買えるとは限りません。それでお客様に不便をおかけすることもあると思います。それを解消できるのが、まずはお客様のメリットとなるでしょう」

 トヨタのディーラーであれば、どのお店でも希望する車種が買えるという点は、大きなメリットです。家から最も近いディーラーを選べば購入時だけでなくメンテナンスのときも便利といえます。

 一方で、統合を目前とする販売会社のひとつである東京トヨペット上馬店の副店長は、4チャネルの違いや変わる点について、次のように話します。

「元々、各社の棲み分けは簡単にいうと『トヨタ(シニアやRV)』、『トヨペット(ミドル)』、『カローラ(ヤング)』、『ネッツ(ヤング)』といったカテゴリで、すこし離れた立ち位置に『レクサス』がいました。最近では、ハイブリッド車の併売も増えてきて、今までの棲み分けも崩れてきている感じです」

 また、現場の体制としては、実際にやってみないと分からない部分が多いです。ただし、お客様にとってはすべてのトヨタ車を選べるほか、サービスも受けやすくなるなどメリットは大きいと思えます」

※ ※ ※

 かねてからトヨタは、2020年代の半ばには現在販売している車種を半減させる方向で調整しているといいます。人気ミニバン「ノア・ヴォクシー・エスクァイア」や「アルファード・ヴェルファイア」といった姉妹車が無くなる可能性もあるのです。

自動車業界の変換期における販売店の存在意義とは

 しかし、トヨタの狙いはそれだけではありません。「クルマを所有しない」という社会に向けた変革でもあるのです。クルマを取り巻く環境は今後、所有するものから必要な時だけ使うものへと移り変わっていくと予測されています。

 そんな社会変化への対応としてトヨタ自身が定額制サービスやカーシェアリング事業を立ち上げますが、その実施にあたっての地ならしが今回の全販売店全車種併売化といえます。

 前出のトヨタ自動車広報部は次のようにも説明しています。

「販売店の見直しで、より地域に密着し、地域社会をより豊かにすることを目指す。具体的には、モビリティサービスを提供する前提として、お客様の求める商品やサービスをどの店舗でも提供できる体制を整えることが狙いです」

※ ※ ※

 たとえば、カーシェアリングであれば、クルマを受け取ったり返却する拠点は多ければ多いほど便利です。また、トヨタは1台のクルマに乗るのではなく、好きなクルマや乗りたいクルマを自由に選び、違うクルマに乗りたくなったら乗り換え、不要になったら返却するという定額制サービス「KINTO(キント)」をスタートさせることも発表しています。

 販売店が全車併売になれば、定額サービス利用者の乗り換えや返却窓口が増え、販売チャンネルの枠を取り去ることで選べる車種の選択肢も広がるなど、ユーザーのメリットにつながるというわけです。

 前出の東京トヨペット上馬店の副店長は、販売店の存在意義について次のように話します。

「最近、インターネットなどで物を購入できることが増えています。そんななか、販売店のメリットとしては実際にクルマを見て触れて試乗ができるということです。

 また、『人と人のコミュニケーション』が可能な場でもあるため、単にクルマを購入するだけでなく、保険やクルマのメンテナンスといったアフターサービスなど総合的なカーライフをサポートする場所といえます」

販売会社の統合を控える東京トヨペット(上馬店)

「100年に一度」という自動車業界の大変革の時代を迎え、トヨタは『クルマを作る会社からモビリティに関するあらゆるサービスを提供する会社へと変わる』と宣言しています。

 販売ネットワークの変革は、単に販売現場の効率化ではなく、自動車業界を取り巻く変化の一環と捉えられます。なお、今後全国的には全販売店で車種を併売するようになっても4チャネルの「トヨタ店」「トヨペット店」「ネッツ店」「カローラ店」という名称は継続するとしていますが、東京に関しては一足早く統合しチャネルの垣根を無くした販売を展開するようです。

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