謎の疫病で人類が滅亡、生き残ったのはレズビアンとゲイの男女2人

 世の新刊書評欄では取り上げられない、5年前・10年前の傑作、あるいはスルーされてしまった傑作から、徹夜必至の面白本を、熱くお勧めします。

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『西城秀樹のおかげです』(森 奈津子 著)

 郷ひろみ、野口五郎とともに「新御三家」と呼ばれた歌手の西城秀樹が、六十三歳で逝去した悲報は日本中に衝撃を与えた。この時、森奈津子の短篇集『西城秀樹のおかげです』を想起したひともいたかも知れない。

 表題作は、謎の疫病で人類が滅亡し、レズビアンとゲイの男女二人だけが新宿で生き残った……という物語。彼らには人類滅亡の時、西城秀樹の「YOUNG MAN」を聴いて盛り上がっていたという共通点があった。

 破滅SFらしい悲愴感はかけらもなく、自身の妄想と欲望にのみ忠実な男女の能天気でハチャメチャなやりとりが展開されるコミカルな作品だが、最後まで読めば、本作が旧約聖書のロトのエピソードの反転であることがわかる筈だ。同性愛の蔓延を罪と見なされ、神に滅ぼされたソドムとゴモラ。助かったのは義人ロトと二人の娘だけだったが、その後、なんと娘たちは父を酒で酔わせて性交するのだ。生殖につながらない同性愛は罰の対象だが、子孫を残すためなら緊急時の近親相姦さえ許される……という異性愛・生殖絶対主義を、バイセクシュアルを自認している著者は、子孫繁栄など知ったことかと言わんばかりに笑い飛ばすのだ。

 さて、二人の男女が何故、「YOUNG MAN」を聴くことによって命拾いしたのかは、実際に読んで確かめていただきたい。著者は百合(女性同性愛)と笑いとSFを一貫して追求してきた作家であり、他の収録作も彼女らしさが溢れているが、地球に不時着したUFOをめぐって女子たちの食欲と性欲とSF欲(?)が入り乱れる「地球娘による地球外クッキング」は特に抱腹絶倒の絶品である。(百)

(徹夜本研究会)

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