千本桜が見頃? 諏訪・松本、信州の遅い春は突然やってくる

みなさんは今年、無事にお花見できましたか?

たまたま天気が悪かったり都合がつかなかったりすると、ゆっくり楽しむ間もなく盛りを過ぎてしまいますよね。ゴールデンウィークが近づく頃になると、桜ははるか昔の記憶という地域の方もいらっしゃるでしょう。私もそんな関東地方に住んでいます。

しかし、4月後半にやっと桜が見頃になる地域もあります(年毎の天候にもよります)。たとえば長野県中信・諏訪地方。諏訪湖などで有名な地域は寒さが北海道並みに厳しく、冬の長さもまた果てしなく感じるほどです。

しかし長い冬が去り、迎える春のまばゆさはひときわ! かつて住んでいた信州の春の輝きを、ちょっとだけお伝えします。

ある日突然やってくる春の彩り

松本の冬は身に沁みます。私は毎年しもやけになっていました。毎朝、自動車のウインドウに氷の結晶がこびりつき何も見えなくなっていて、しばらくは発車できません。

それほど雪は積もりませんが、凍てつく空気漂う冬の景色は荘厳。何者をも寄せつけない気高ささえ感じさせます。諏訪湖の湖水が凍り亀裂が入る「御神渡り(おみわたり)」など、寒さあってこその美しい風景も見られます。

いつまでも続くように感じる寒さに縮こまっていると、ある日突然、春はやってきます。

おおげさですが、フラッシュライトを浴びたようにいきなり光が増し、風がぬるみ、それにともない大地に豊かな色彩が現れます。今まで無彩色だった風景に色が溢れ出すのです。薄緑、赤、黄色、ピンク、オレンジ……。ぬるんだ風を桜の花が優しく彩り始めます。

何もない世界に突然生命が誕生したかのように、地上が賑やかになります。寒い国の春は、寒さに凍えた景色を一瞬で塗り替えるのです。

松本で春を迎えていた頃、「人間だけではなく草も花も木も、水も鳥たちも春がくるのを今か今かと待ちわびていたんだ」と毎年強く感じていました。長い冬のトンネルをぬけたばかりの目を、まともに開けられないほどの眩しい春なのです。

やっと春が来たかと思うと、もう数日後には初夏の装いになっているのもこの地方の特徴です。春の花々は限られた時間にめいっぱい華やごうと皆同時に満開となります。まさに春の花の競演。冬に抑圧されていた生命力の噴出に圧倒させられます。瞬く間に過ぎる諏訪・松本地方の春。そこに咲く花は命の刹那を思わせます。

諏訪湖周辺は4月中下旬に桜が見頃になる場所も

散るからこそ花は美しい。平安朝の文化人も言うとおり、盛りが短いからこそ桜もよりいとおしく感じるのでしょう。生まれが関東の私は、桜は入学式に咲くものだと思っていました。松本市に住んで初めて、桜のない入学式を知ることになります。

諏訪湖の周囲にも多くの桜が植えられています。遅い春に目覚めた湖水を縁取る桜霞は、この世のものとは思えません。夢心地の春の日も、数日後には気温がぐんとあがり、たちまち霞は立ち消えて濃い緑の繁る初夏になるのです。まさに夢を見ていたかのような春のひとときです。

信州松本・諏訪地方の春を味わったことのない方、ゴールデンウィーク前半ならまだ春の余韻が感じられるかもしれません。諏訪市観光ガイドの桜だよりによると、千本桜と呼ばれる桜林が有名な「西山公園」は4月中下旬、高台にあり諏訪湖を一望できる「立石さくら広場」は4月下旬が見頃とされています。

もしあなたより一足先に春が立ち去ってしまったとしても、標高のより高い場所を訪れれば春はまだそこに留まっているはず。しかし信州の春は気温差が激しく、夜はかなり冷え込みます。花にうつつをぬかして風邪を召されぬよう、上着の準備をお忘れなく。

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